第1章 線形物理学

線形力学

 物理学は自然を数学のことばで語る学問である。物理現象を大きく2つに分けてみる。線形現象と非線形現象である。線形現象とは、ケプラー力学から、振動子、滑車、てこなどのニュートン力学解析力学や相対論と量子論標準模型までの素粒子論を指す。非線形現象とは、海や川やコーヒーの渦などの流体、雲や雪や台風と島や入江や山脈などの複雑系、表皮と分枝と体節、DNAや微小管、卵から脳に至る発生力学を含む生命力学を指す。本章では線形力学を扱う。
 20世紀によく知られたように、線形力学では2つの形態が発見されている。粒と波である。光と電子をモデルとして、電磁気と物質は粒と波の二面性をもっていることがわかっていた。しかし、20世紀に見落とされたもうひとつの形態がある。面である。

面とエネルギー

 面は万有引力の法則にも登場していた。F=GMm/r^2 の分母 r^2 は面積である。わかりやすくするために、πを掛けて、S=πr^2 とおいた FS=GπMm. を使って説明する。ここでSは円の面積である。質量Mの物体と質量mの物体は距離rだけ離れている。質量Mの物体を中心に考えると、線分Mmは点Mを中心とした円を掃く。線分Mmの長さがrであるから、掃く面積はπr^2となる。これをケプラーの太陽モデルという。
 クーロンの法則においても同様である。F=1/4πr^2 * 1/ε * Qq.と表そう。S=4πr^2は半径rの球の表面積である。したがって、FS=Qq/εとは線分Qqは点Qを中心とした球を掃く。線分Qqの長さがrであるから、掃く面積は4πr^2となる。これをラザフォード―長岡の原子モデルという。

面力

 この面にエネルギーは平等にそそぐので、面積はエネルギーである。地球の表面積のうち太陽が照らす面積は太陽エネルギーの量と等価とみてよい。式で表すと、ざっと E=gc^2/Gπ * S, S=πr^2. となる。また、S=4πr^2 のとき、エネルギーは E=σST^4, Tλ=const. となる。このように、太陽モデルのとき、エネルギーは円盤であり、原子モデルのとき、エネルギーは温度の4乗または波数の4乗を掛けた球面である。これをエネルギー面といい、FSを面力という。エネルギー面には、円盤や球面のほかにも、直交波面、リーマン面など、さまざまな形がある。