軌路力学 第3章 第3節 三つ組の魂百まで

光のひも

 光はエネルギーの粒としてふるまう光子であり、エネルギーを波としてとりまいている。
 
 光の「みはじ」を次の式で定義する。
 
 λが道のり、Tが時間、cが速さに相当する。波においてλは波長、Tは周期、cは波の速さである。ところで、波長は半径rの円周なのである。
 
 この円周もとい光のひもは回転する。そして、半径が大きいほど波数は小さくなる。
 
 複素空間において、距離r、波数k、波長λは、複素数zを用いて次のように表せる。
 

放射能とDNA

 遺伝暗号表では3塩基文字で1つのアミノ酸文字を特号している。なぜ3つなのだろう。アミノ酸は分子内でプラスとマイナスに電荷が分かれている。3つのアミノ酸がブロックとなってタンパク質を形成するためには、ひも状のDNA上でアミノ酸が回転しては、応急の製造装置としてふさわしくない。幾何学的に見れば、3つの点が決まれば面が1つ決まる。面で接すれば、アミノ酸が回転せずにすみ、DNA上で安定した足場が組める。接点が多いと多くのアミノ酸を特号できるけれども、粘性が高くなり形成速度は遅くなる。面を決めるために最少の点数である3つが過不足なくちょうどよかったのだろう。
 DNAが最も脆弱なのは、このタンパク質製造時である。2重に巻かれ、何重にも巻かれて収まっていたいたDNAがほどけているのである。1本の分子となったDNAに光のひもが通過すると、塩基の二重結合部を中心に、光のひもはエネルギーを与えてしまう。したがって、たくさんの光のひもを受信した塩基のうちのいくつかは、高エネルギー状態になって結合を変えてしまう。一度結合を変えてしまった塩基は、異なるtRNAを引き連れてしまうか、どのtRNAもうまく引き寄せられず、タンパク質を合成できなくなる。合成できたとしても、いままで製造したことのない不思議なタンパク質である。
 ここでいう光のひもとは、γ線のことである。β線はより強力に塩基の結合を変えてしまうし、α線は塩基自体を壊してしまう。

「もっと光を」

 意識は光のひもを、網膜、視神経を経由してニューロンに届ける。ニューロンのなかで微小管を通じて他のニューロンに光を信号あるいはエネルギーとして送信する。主に受信を微小管等細胞骨格が、送信を微小管叢すなわち中心体が担う。ニューロン送信先へ伸びる。多くの伝達物質に光が推進のためのエネルギーを提供するからだ。
 有益かどうかわからない仮説であるが、ニューロンは細胞あたり体積の上限が決まっていると考えられる。細胞の広がれる表面積の上限が決まっているのは、どの細胞も同じだと考えられるからだ。細い足で遠くまでつながったニューロンは、とても細いので伝達が速く、太く短くつながったニューロンは多くの情報をまとめて送れる。いずれにせよ、速く信号を伝達できる。
 このとき、ニューロンを流れる伝達液の濃度に異常がみられると、精神病となる。精神病は脳の病として知られて久しい。芸術家のゲーテ双極性障害だったという。光とともにクオリアが知覚でき、知覚できないクオリアがつねにあらわれては消えている脳である。亡くなる直前に光を欲したのは、クオリアの根源を求めたためではないか。
 意識は光によって変わる記憶やクオリアや知覚認知を日常的に生み出す、電磁気的な場であると考えられる。それをいつも知覚しているように感じている自意識である。自意識をうまく制御できれば、特定の顔つきに似てきたり、特定の記憶を効率よく入力できる。自意識が過剰だと非難されて落ち込むのではなく、意識をうまく使って能力や容姿を変化させれば、自意識過剰から脱出できる。そのためにも、もっと光を浴びよう。