素粒子講座その2

量子数の算数

 現在のところ、物質の最小単位は陽子や中性子ではなく、それらさえも、より基本的な粒子でできている。

 たとえば陽子は2個のアップクオークと1個のダウンクオークで、中性子は1個のアップクオークと2個のダウンクオークで、できている。このように、複数の(ふつう2個か3個)フェルミオンでできている粒子にはたくさんの種類がある。下の周期表のようなもの参照。
 クオークレプトンの豊富な品ぞろえをフレーバー(香り)といい、各々の素粒子に特徴的な数で粒子(品目)を区別する。この区別に使われる数を量子数という。量子数にはどんなものがあるかというと、

  ストレンジネス=−(ストレンジクオークの数−反ストレンジクオークの数).
  チャーム=チャームクオークの数−反チャームクオークの数.

というように、単純な算術で計算できる値。また、フレーバーとはいわないけれどその他の量子数として、

  バリオン数=(クオークの数−反クオークの数)÷3.

などがあり、簡単な算数である。
 ちなみに、クオークレプトンには12種類それぞれ反粒子電荷の正負が逆の粒子)がある。ニュートリノ3種類には電荷がないので反粒子ニュートリノ自身の可能性がある。これら反粒子を含めた24種類のフェルミオンから、ほとんどの粒子は構成されている。

簡単な法則

 素粒子は量子数で特徴づけられ、区別されるが、そのなかで単純な法則が知られている。
 中野・西島・ゲルマンの法則は、

  電荷=I3+(バリオン数+ストレンジネス)÷2.
   I3とはアイソスピンという量子数のz方向の成分.

また、ゲルマン・大久保の公式は、

  質量=a+bY+c(アイソスピン×(アイソスピン+1)−Yの2乗÷4).
   Y=バリオン数+ストレンジネス.a,b,cは定数.

 これらの公式によって、電荷や質量など、古典的な物理量が素粒子の世界で簡単に計算することができるようになった。

周期表のようなもの

 陽子や電子の数に注目して元素の周期表ができているように、素粒子の量子数に注目して粒子の周期表のようなものができる。

 上図は縦軸にY(=バリオン数+ストレンジネス)、横軸にI3をとったもの。スピンの値によって3つの表に分けた。反粒子電荷だけ逆の表なので、いわばこの表の裏である。
 これで反応式、力学、反応機構、周期表がそろった。素粒子は化学のように理解できる!!
 次回は標準模型について。