ドクターのコメント

最近記事のおさらい

 睡眠の記事と電極の記事でおわかりのように、ニューロンのON/OFFがニューロン的にどういう状態なのかはわかりつつあるようですが、そのとき意識がどんなことをしているかは謎のままです。
 ONのニューロンは覚醒中で、NMDA受容体が増えて可塑性が増し、シナプスの結合をつなぎかえるのでした。電流をかければニューロンはしばらくONになり、おそらく活動がしばらく持続するのでしょう。
 一方、OFFのニューロンは眠っていて、電気的に0であり、陰極周辺でみられるのでした。そして、ONとOFFをいったり来たりするのがノンレム睡眠ということは、寝ている間もニューロンは個別に睡眠と覚醒を繰り返すのです。

睡眠の定量的実験が可能

 不安系の病気の患者さんに処方されるセロトニンを増やす薬は、飲むのをやめると眠くなるそうですが、セロトニンが減り、ニューロンがつぎつぎにOFFになるので眠くなるのでしょう。
 一方、興奮系の患者さんに処方されるドーパミンを抑える薬は、飲まなくなると眠れなくなるのは、ドーパミンが増えONニューロンが増えるからでしょう。
 しかし、ONになると神経伝達物質の量が増えることがわかっているからといって、神経伝達物質の量が増えるとONになるとはまだいえないわけで、どのくらいの量でONになるかとか、どんなグラフになるかとか、どの神経伝達物質でいえるのかなど、これからの実験に期待するところです。

精神と物質へ

 それでも意識の問題について少しずつ実験ができるようになることは確かです。たとえば、夢は寝ているときのONニューロンのしわざなのか、覚醒時歩いている時なんかに浮かぶイメージと夢はニューロン的に同じしくみなのか、睡眠中意識が飛ぶのはどんなニューロンが何割くらいあるいはどんな活動をする条件のときなのか、が調べられます。また、電極を使ってニューロンの一部だけ眠らせることもできそうです。
 科学が克服できないでいた精神や意識の問題は変質するでしょう。精神も意識も物質が生み出すことは確実で、科学はそれらを間接的に確認できる。と。
 以前三十路ドクターが、精神は物質と同型の法則に支配されている、と言っていたのが思い出されます。精神が物質から生まれるのなら、それも自然でしょう。意識は肉体に対して受動的なのかもしれませんね。