頭が良くなる電極

能力が上がる方法

 Nature 472, 156-158 (2011)に興味深い記事が載っている。脳のある部位に電極を貼り、弱い電流を15分から20分流すと、作業記憶や言語連想、複雑な問題を解く能力が上がるという。それも、数時間から数ヶ月続くという。
 使うのはDIYで作れる簡単な装置だ。9Vの電池1個、数本の配線コード、そして抵抗器1個をそろえればよい。どこに電極を貼ればよいかについては、上の記事の「WIRED UP」という図を参照されたい。

「考える帽子」

 直流電流が脳内に作り出す電場が、ニューロンの膜電位を変化させる。+極の刺激は、「ON状態」をもたらし、−極の刺激は「OFF状態」をもたらす(ON、OFFについては昨日の記事参照)。ON状態になると、シナプスでNMDA受容体の発現量が増加する。これによってニューロンの可塑性が高まり、新しい刺激に対して応答しやすくなり、シナプスが接続し直される。
 この方法は「tDCS」と呼ばれ、PLoS One 6, e16655 (2011)の著者は、これを「thinking cap」として商品化する計画を立てている。うつ病脳卒中のリハビリ、依存症の治療に使えるという。

見直された実験

 実はこの分野、200年ほど前の忘れ去られた実験がもとになっている。当時は脳を調べる手段が限られていたので、真偽の程も検証されなかったのだ。Neuroreport 9, 2257-2260 (1998)で200年ぶりに再発見したプリオリ氏は、「1世紀以上前の実験はもう一度取り組む価値がある。新しい技術や装置を使えば、かつて誰かが失敗した実験も成功することもある」と述べている。